以前より大学への推薦入試で英語力を示す資格として注目されている英検®ですが、最近では一般入試でも加点や英語試験免除など、受験を有利に進める上で欠かせない資格となっています。

今回は、大ヒットマンガ『ドラゴン桜』のモデルとなり、学研プライムゼミで英検対策講座の講師を務める竹岡広信先生に英検対策やこれからの英語指導について、学校現場視点のお話しを伺いました。

※英検®は公益財団法人日本英語検定協会の登録商標です。

竹岡 広信 先生

NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介された、東大合格者がもっとも信頼を寄せる英語講師。東大英語だけでなく共通テスト英語対策、英作文講座は大絶賛されている。現、大手予備校講師および竹岡塾主宰。

英検合格のためには「考える力の醸成」と「上位級レベルの学習」を

英検対策において大事な姿勢とは何でしょうか。「間違いは生徒自身に探させ、考えさせる」と竹岡先生は言います。

英検対策の基本は、とにかく過去問を解くことです。おすすめは公式の過去問です。時間を計って解かせるだけでは瞬発力はつきますが本質的な力はつきません。私の授業では、テストをしてひとつでも間違っていたら「どこかが違っているよ」と言って答案を返します。生徒自身にどこが間違っているかを考えてもらうのです。

例えば、英検2級対策をする場合、準1級の単語集を辞書代わりに使うことがおすすめです。2級では、準1級レベルの語彙も登場します。英検2級のすべての語彙を理解できなくても2級の合格は可能です。ただし、満点を取ることは難しいでしょう。満点を取る実力をつけたいのであれば、準1級の語彙に触れておくことが大切なのです。

準1級対策なら、12000語程度の単語集が役立ちます。語彙は大学受験用の単語集より少し難しいくらいです。2級までは基礎力が大事ですが、準1級になると問題を解くためのテクニックも必要になります。特にリスニングでは、聴く力に加え問題の先読みが鍵となります。また、級が上がるにつれて、「言い換え問題」がよく出題されます。問題の全体像を把握していないと解けないように構成されています。考える力も上位級ではますます求められるのです。

ライティング対策は、「自分が使える表現で」

学校現場でのきめ細やかな指導に時間がかかると言われるのがライティング指導ですが、ライティングは英語力の土台となる、と竹岡先生は語ります。ライティング指導では、何を意識すべきでしょうか。

まず、日本語をそのまま訳することには限界があるということを生徒に気付かせることがポイントです。例えば「日本では、電車に乗ると乗客が寝ている光景を見かける」という問題文があったとします。「電車に乗る」をそのまま訳そうとして“get on the train”を使ってしまうと、電車に乗った瞬間を指すことになり問題文が表現している状況にはなりません。 「光景」を“sight”と訳しても不自然です。よって、まず、直訳して書くことは難しい、と気づかせることが重要です。ライティングは、自分が使える表現で訳していくことが肝心なのです。背伸びせずに、シンプルに書くのがコツです。

“In Japan, people are sleeping on the train.” これだとシンプルで不安に感じるかもしれませんが、これでいいのです。英検1級に何度も合格している生徒も、ライティングは中3の教科書に出てくる表現を使っています。「自分が使える表現を使う」ことで、問題文が言いたいことから大きくそれず、不自然な表現を使わずに英語を書くことができるのです。

高い英語力が求められる海外勤務経験者も「最初の2、3カ月は苦しかったけど、基礎があれば使えるようになる」と言います。学校現場で、いきなり洗練された英語を教える必要はなく、仮に将来海外で働くことになったとしても応用できる英語基礎力を育ててあげればいいのです。

スピーキング力強化のためには?

ライティングで培った「自分が使える表現を使う」力をスピーキングに活用するための練習は、具体的にどのようにするのがいいでしょうか。

そして、スピーキング対策におすすめなのは「オンライン英会話」です。考える時間は短い方がもちろんいいのですが、レスポンスを速くする練習ばかりしていると、間違いを修正できないまま覚えてしまうこともあります。オンライン英会話は会話の練習ですから、適当に何かを言うのではなく、自分の言える範囲で考えながら言ってみるよう生徒に促してみてください。英語では、結論を最初に伝えて、first, second…と理由を話していく「型」もあります。それに当てはめて、声に出しながら考えるという方法もおすすめです。

学校の授業でペアワークをやり、スピーキング練習をさせることがよくあると思います。課題は、生徒同士で教え合うことによって、間違いを間違いのまま覚えてしまうことです。ペアワークの目的は、あくまで「人前で自信を持って話せるようになるため」という位置づけがよいと思います。

品詞を知らないと瀕死!?スマホ世代の生徒の英語力とは

最近の生徒はスマートフォンの自動翻訳を使いますが、自動翻訳を使った学習の影響は出てきているように感じますか。

生徒のテストへの対応力については、昔より上がってきていると感じます。大阪のある難関高校では入学時にかなりの人数が2級を持っています。かつて英検2級に挑戦する中学生はほんの一握りだったのですが、現在では、高校入学前に2級を取得済の生徒も増えているのです。どんな検定試験もそうなのですが、受験者のテストへの対応力が上がるに比例して、問題の難易度もどんどん上がります。英検もTOEIC®も、昔の問題のほうがはるかに簡単でしたね。

取り巻く環境も紙の辞書を使う時代から電子辞書に変わり、最近の生徒は、スマートフォンの自動翻訳を使います。自動翻訳機能の弊害は、生徒の品詞理解不足という形で現れてきています。例えば、難関校に通う生徒でも“there are +単数”や、“go Tokyo”のような基本的な間違いをします。辞書を使っていた時代の生徒には、ほとんど見られなかった間違い方です。翻訳するとgo abroadと出てくるので、“go to Tokyo”とせずに単語だけ入れ替えて“go Tokyo”としてしまうのでしょう。自動翻訳は使いこなせると便利ですが、私の授業では品詞からしっかりと教えるようにしています。本当に英語ができる生徒を育てたいのであれば、品詞の学習は必須です。基礎力は欠かせませんので。

「できた!」の積み重ねで、モチベーションが変わる

求められる英語力が上がっていく中、英語学習についていけず英語嫌いになる生徒もいます。少しでも英語が好きな生徒を増やすためには、どのような指導が効果的でしょうか。

「できた」という実感を少しでも持たせてあげることです。

例えば、英検の語彙の問題で、20問中3問しかできなかったらやる気がなくなりますよね。だから、英語が苦手な生徒には受験予定の級より下の級の問題から取り組ませ自信をつけさせています

特に語彙力は成果が見えやすいので、苦手な子も楽しく学べると思います。例えば、語源から入るのもよいでしょう。Septemberはもともと7月でした。sevenだからSeptember、Novemberはnine、Decemberも10年のdecadeからきた言葉です。語源の解説などで英語って楽しいと思わせることができれば、生徒の学習のモチベーションも変わっていきます。

生徒の進みたい道に合わせた「英語力」を

英語は、コミュニケーションのためのツールであって目的ではないとよく言われます。世界で活躍する人材を増やすためには、どのような英語教育が必要でしょうか。

英語力の捉え方は、今後二つに分けていくべきだと思います。「少し話せれば楽しい」レベルと「仕事でバリバリ使う」レベル。音楽も同じですよね。趣味としてギターを楽しむのとプロのギタリストとして食べていきたい人は、姿勢や求められるレベルが全く違うと思うのです。

だから教師は、生徒がどちらの方向に進みたいのかに合わせて指導していく必要があると思います。片言でも物怖じせずに話せればいいなら楽しく学ばせればいいですし、将来世界で活躍したいと考える生徒には、正しい英語を使えるように間違えたところは厳しく直していかなくてはなりません。ただ、どちらにおいてもいちばん大切なのは、まず英語を好きにさせることだと思います。

ひとりひとりの英作文を添削するといった地道な作業もありますが、先生方の努力によって生徒の力は着実に伸びていきます。指導力の仕方次第で飛躍的に伸びる生徒も多いと思うので、そういった生徒をどう伸ばしていくかを考えるのが教師の腕の見せ所ですね。

学研英検®(準1級・2級) 4技能対策パック

英検®の「一次対策」と「二次対策」をトータルサポート。
合格率をアップさせる指導体制を学校内で簡単に構築できます。
一流講師による「映像授業」とわかりやすいテキストで合格に必要な土台を完成。
「オンライン英会話」では、外国人講師とのマンツーマンレッスンで模擬面接にチャレンジできます。
英検Ⓡ対策なら「学研英検Ⓡ 4技能対策パック」におまかせください!

※このコンテンツは、公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。